Phil meets ブルゴーニュ産ワイン(コレクターK氏)

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モデルエージェンシー「BARK IN STYLe」所属のPhil(フィル)が“いま気になるコト、モノ、ヒト”にフォーカスする連載企画『Phil meets 〇〇』。今月はPhilを語る上で欠かせないお酒について、“ブルゴーニュ産ワイン”のコレクターであり、Philの友人であるK氏に話を訊いた。

ワインについての知識が皆無な筆者は、ネットに転がるネタをひとまず頭に掻き込み、Philから伝えられた神奈川県の某レストランに足を運んだ。そこにはPhilとともに白シャツにデニム姿のK氏が、真っ白なクロスを敷かれたテーブルを囲んでいた。緊張しながらも経年劣化でボロボロにラベルが剥がれた1970年産のシャンパンワインを片手に、PhilからK氏への一問一答に近い対談がスタートした。

Phil(以下、P):K氏は昔からお酒好きだったの?
K氏(以下、K):僕は元からあんまりお酒が強くないので、今でも1日4杯ずつくらいしか飲まないんですよ。僕は量より質タイプなのかも。お酒が強い人は割とビール、ハイボール、レモンサワー、ワイン、日本酒などなど色々ちゃんぽん飲みできるけど、僕はそれができない分、(ブルゴーニュ産の)ワインをゆっくり嗜んでるのかもですね。

P:(俺も)割とワイン好きだから知ってるんだけど、一から質問していくね。まずブルゴーニュとボルドーの違いってなに?
K:まず一般的に日本人はボルドー好きの方が大半なんですよね。渋くて重いボルドー、軽やかで華やかなブルゴーニュはみたいな感じ。言ってみればボルドーは居酒屋でよく取り扱われてるし、ブルゴーニュはレストラン向きだからあまり触れる時がないかも。僕はそんな香水みたいな華やかさが好きで、ブルゴーニュを好んで飲んでますね。
P:あと、ワイン通は割とブルゴーニュ好きが多い気がするんだよね。
K:それはあるかもね。やっぱりバブルの時期に会社の上司がボルドーワインの高いものを「これがいいワインだよ」って進めたせいもあるんだけど、ボルドー好きにしたら「ブルゴーニュは味が薄い」って言われる。

P:フランス産のワインは僕も好きだけど、なんでブルゴーニュ産にこだわってるの?
K:イタリア産や(フランスの)ボルドーも飲んだけど、漫画の「神の雫」を読んだ時にブルゴーニュ産のDRC リッシュブールを知って、気になりすぎてレストランで取り寄せてもらったんだよね。その流れを通っていたイタリアンのシェフに尋ねると、「まだ味もわからないんだから、まだ飲んじゃダメだよ」ってなって、そこから毎日舌をブルゴーニュワインに慣れさせる修行期間に。そして、1年後にようやく30万円と2万円のワイン4本を飲み比べしたんですが、そこでまんまと外してしまって。そこからまた1年間ブルゴーニュ産のワインを飲み続けて、研究して、やっと2年目で感覚を掴んで見事当たったんです。
P:確かにさっと取り寄せて飲んでも味はわからないよね。その漫画とシェフに出会えたのは転機だったんだね。
K:まあその出会いによってブルゴーニュワインが僕の人生を侵食して、そこにお金も時間も費やしちゃってるんですけどね。カードの色が変わるくらいに(笑)。

P:ワインを嗜む目的はあるけど、投資目的もあるの?
K:もちろん初めは自分で飲むために買ってたんですが、それが飲みきれなくなっちゃって。それこそ、アンリ・ジャイエの甥っ子(弟子)、エマニュエル・ルジェが作ったクロパラントゥを毎年12本くらい買い足してて、自分が飲まない分は年代違いのセットにして売ろうかなと。市場に出たら業界人がざわつく様なワインなので、値段は言いにくいですが結構な額ですよ。
P:やっぱりそうだよね。ワインって天候や生産者とかに左右されるもんだから、同じものってこれまでも、これからも生み出されないんだよね。そこがロマンチックでもあるし、だから世界のコレクターからしたら「あの年代のあのワインが欲しい」ってなるんだよね。

P:観賞用としてるワインもあるの?
K:マグナムとかはモロにそうですね。流通している数もそうですが、やっぱりどこにも見当たらないものばかりなのでね。
P:サイズも大きいし、みんなでじゃないと開けられないよね。今ではあまり見かけないもんね。
K:通常のボトルの2本分相当だから一気に飲み干せないし、熟成する速度も遅いから、観賞用になってる。

P:ちなみに、K氏は今何本くらいワインを所有しているの?
K:3年くらいで500本くらいですかね。全部ブルゴーニュで。
P:ものすごい数だね。
K:当然500本になると自分の家には置き切れないので、レストランで購入したものは30本ずつぐらい都内と神奈川に各店に置かせてもらってますね。あと12本単位で買ってるものは、イギリスから買ってるってのもあって、エリザベス女王が愛用するセラーに保管してもらってますね。
P:それって飲みたい時に取り寄せるの?
K:そうですね。中でもルロワのミュジニーは1番高級なワインですね。
P:確か2本持ってるんだよね?
K:いや、実際のところ5本持ってるんです(笑)。

P:最近ハマってるワインは何?
K:最近はワインの中でも古酒にハマってて、自分の生まれる前にできたお酒を飲むことは多いかも。なんか不思議な感じがしません? 「あぁ、これが第二次世界大戦の味か」みたいな。
P:確かに粋な大人の嗜みだよね。日本だとワインが趣味っていうと、お金持ちの特権みたいなところはあるけど、海外だとそういった大人は多いよね。映画で観るようにウイスキーやワインを飲む習慣が根付いているし。
K:ワインは生産年から味までネタが盛りだくさんなので、それをきっかけにコミュニティが広がりますよね。
P:僕らの出会いもそうだしね。

P:どういうタイミングで高価なワインを開けるの?
K:僕は一人の時が多いかな。それこそソムリエさんと一緒にその1本について語り合ったり。あとはワイン好きの友達が「あのワイン飲んでみたいんだよね?」って言われた時に「それ持ってるんだよね」って開けるパターンもあるかな。大勢集まってその場のノリでってのはないかもですね。
P:開けて後悔したりするの?
K:後悔もパターンあって、開けるタイミングが早かったというのが1番ショックですよね。もう少し熟成させればよかったな的な。スニーカーもそうでしょ?
P:そうだね。でも俺の場合は決めてて、シーズンを分けて卸す時を決めてる。もう気合いだよね。

P:(ワインにも)スニーカーでいうスーパーコピーみたいな偽物は出回ってるの?
K:高いモノはよく出回ってるよね。ワインなんて素人目に見ると中身すり替えられてもわからないですからね。僕は大手のインポーター(鑑定士付きの市場)から直接買うようにしてるので多分偽物ではないですが、暇なときは海外のインポーターの通販サイトで一般的に高価なワインを衝動買いしたりもしてますね。
P:偽物に当たったことはないの?
K:多分ないですね。もしかしたら気付いてないだけかもしれませんが。わからないですよ、さっきの話に戻りますが、年代だったり生産者によって味が変わってくるので。

P:K氏のマイルールみたいのはあるの?
K:やっぱり家で飲むよりもレストランでソムリエさんに入れてもらった方が美味しい。もちろん家でもブルゴーニュワインに適したチューリップ型のグラスで飲んでいるけど、何か違うなって毎回思う。なんていうんだろう、やっぱりその場の雰囲気なのかな?
P:それは絶対にあるよね。たまに水飲み用グラスで、ブルゴーニュのワインを出されるとゾッとするもん。やっぱりそのワインに合わせたクラシックなグラスで飲みたいと思っちゃう。

P:今回、1万円以下で美味しいワインというお題で、「2018 フィサン ブラン、ジャン・ミッシェル・モラン」、「2017 ニュイ・サン・ジョルジュVV、ロベール・シュヴィヨン」、「2016フィサン、ドメーヌ モンジャール・ミュニュレ」をセレクトしてもらったけど、ジャッジのポイントはどういったところかな?
K:まずは華やかさかな、あとは高級ワインとも引けを取らない味。この3本を飲んでもらっておいしいと感じてもらえたのであれば、もう僕としては「ブルゴーニュの世界にハマったな!」って思います。
P:ラベルだけ見てもわからないし、まずはそんなに価格もしないので飲んでいただきたいね。それこそAmazonとかでも取り寄せできるんで。
K:ワインは金額もそうですが、年代感覚でも楽しめるのでそれは他にはないですよね。そのワインは僕たちに飲まれるために生まれたのか、回り回ってこうなったのか、って運命論みたいな話もできるし、ワインの魅力を自分なりに見つけてもらえたらなって思います。破産しない程度にね(笑)。

Photo: Ayase