Phil meets KIXSIX(ディレクターT氏)

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スニーカーヘッズおよびファッションユーザーであれば、一度はその名を耳にしたことがあるだろうKIXSIX(キックスシックス)。欧米圏でスニーカーを表すKICKS、そして中毒者を表すSICKS、その2つの言葉を掛け合わせた造語というKIXSIXは、「スニーカー中毒者たちに処方箋を」というコンセプトを掲げたシューレース専門店である。本稿では「BARK IN STYLe(バークインスタイル)」所属のPhilが足繁く通う、“謎多きブランド”を掘り下げていく。

 

– スニーカーブームを読み解いたビジネスセンス

「KIXSIXを発足したのは2016年9月。それまではOEMの会社に勤めてたのですが、2013年あたりから世間一般的にNikeのスニーカーブームが再燃してきて、そこに乗っかる形で事業を始めたんです。当時のシューレースの立ち位置と言えば単なる付属品でしたし、最初は自分と友達のために作っていました」と語るディレクターのT氏。

ブランド発足から約5年、T氏本人はここまで続けるつもりもなかったという。だが本人の中での転機は3年前の「atmos con(アトモスコン)」で限定販売したmastermind JAPAN(マスターマインド・ジャパン)とのコラボレーションだった。同ブランドはファッションを好きになったきっかけであり、時を経てブランドと消費者ではなく、ブランドとブランドという対等な立ち位置で協業できることに喜びを感じたという。そして。この取り組みがT氏の考え方に大きな影響を与えた。

「今までブランドさんや企業さんなど、さまざまな方々とお取り組みをしてきました。常に面白い企画になるよう試行錯誤しながら商品を作ってきましたが、avax所属のi☆Ris(アイリス)というアイドルユニットとコラボレーションをした際は自分の中で葛藤がありました。ライブのマーチャンダイズとしてシューレースを作るという今までにない試みでしたので、これまで築いてきたKIXSIXのコアユーザーが離れていくのではないか?と不安に。でも蓋を開けてみると、僕が想像していた反応とは真逆。さらに(シューレースという)付属品であったものに価値を見出してくれた新規のファンも増えたので、今では本当に感謝してます」

 

– 原宿ではなく吉祥寺がベース

“流行の発信地=渋谷、原宿”と考える方も多いのではないだろうか。無論、筆者もこの話を聞くまではそう思っていた。所謂、藤原ヒロシ、NIGO®︎(ニゴー)、高橋盾ら日本のストリートカルチャーの最重要人物たちも原宿を拠点にしてきた。そして、中高生の時に誰もが憧れるファッションブランドは、渋谷と原宿に密集している。

「ここにお店を構えた理由は、僕自身の生活拠点が吉祥寺だったからってこともありますし、実はスニーカーだけ見ると原宿よりも吉祥寺の方がカルチャーは根付いているんです。SKIT(スキット)を筆頭とした有名なリセールショップが長年ここにはありましたし、今ではランニングに特化したショップになってしまいましたが、昔はナイキ吉祥寺もここでしか発売しないレアスニーカーとかもあったり。もし、原宿のプロペラ通りにお店を構えていたら、周りが良いお店ばかりなのでどうしても“ついで”になってしまいますよね。僕は欲張りではありますが、“目的”として来てほしかったのでKIXSIXは吉祥寺をベースにしました」

 

 

T氏の考えはすべてがロジカルな印象を受けた。そんな彼が生み出す商品の数々もユーモラスが宿っている。KIXSIXの目玉であるシューレースは大きく2種類の定番品があり、それが丸みを帯びたオーバル(20色)と高級感のあるワックス(14色)。ひとつ例を挙げると、オーバルはNIKE SBシリーズのようなボリュームのあるタイプにマッチする個性派、もう一方のワックスはスニーカーをドレスアップしてくれる品のある顔立ちが特徴的だ。それぞれのパッケージは処方箋から着想を得たカプセルに包まれて販売され、定番色はメルカリやヤフオクで倍近い価格で取引されているという。

 

– ガチャガチャもKIXSIXを代表する逸品

 

「吉祥寺にオープンした2019年11月から継続しているオリジナルガチャガチャもご好評いただいてると思います。1回500円でタオル、デュブレ、トートバッグなどシリーズによって当たるアイテムは変わるので、高校生が1つ2000円のシューレースは買えないけどもガチャガチャだけやりに来てくれるってことも。このガチャガチャは売り切れたらシリーズが入れ替わるシステムで、全国25箇所にフランチャイズして置いてもらっています」

 

 

シューレースから始まり今ではオリジナルグッズの展開を行うKIXSIX。NewEra(ニューエラ)とのキャップは定番であるが、ブラックスケルトンカラーのタワーボックスや、東京都福生市に拠点を構えるサバゲーフィールド「BLKFOX®︎(ブラックフォックス)」とのコラボTシャツも今後ローンチ予定とのこと。年明けから1度もお店をオープンしていないKIXSIXであるが、6月上旬に予定する同コラボレーションのタイミングで一時的に開ける可能性もあるようだ。

「Tくんとの初対面は、左右田さん(BARK IN STYLe会長)とのミーティングにお邪魔した時かな。それを機にモデルとして撮影に呼んでもらって、ちゃんと話すようになったんだよね。初めはファッションに詳しい方という印象だったけど、色々話すにつれて僕の周りの経営者やファッション業界の人たちの中でも“異色の存在”だなって感じたんだよ。というのも発想がクレイジー、それはもちろんいい意味でね。去年の9月にKIXSIXはアパレルショップでありながら飲食店のようなテイクアウトを実践してて、それを知った時は何それ?って思った。でも話を聞いていくうちに、お客様第一で、同時にコロナ禍で不協和音が漂ってたアパレル業界に新しい風を吹かす刺激的な施策だなって。そういう秀でたビジネスセンスも尊敬できるんだよね」とPhilは最後に話してくれた。

KIXSIX吉祥寺
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目28−3−107
HP:https://kixsix.official.ec/
IG:@kixsix_official_jp

Photo: Ayase